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第18回:「なりたくてリーダーになったわけではないので、私にはわかりません」

突然リーダーを任された現場の戸惑い

 介護現場では、前任のリーダーの急な退職や、人員体制の変更などをきっかけに、現場職員が突然リーダーを任されることがあります。日頃の業務を問題なくこなしている職員であっても、リーダーとしてどのような役割や責任を求められているのかが十分に理解できていなければ、不安や戸惑いを抱えたまま役割を担うことになります。

 なかには、「成長の機会にしたい」、「任されたからには頑張ってみよう」と前向きに受け止める職員もいます。しかし、すべての職員が同じように受け止められるわけではありません。役割の変化に期待よりも不安を感じる職員も少なくないでしょう。

 現場職員は責任感からリーダー職を引き受けたものの、何をどう進めればよいのかわからず、戸惑いを募らせることがあります。一方、管理者はその職員の働きぶりを評価し、信頼してリーダーに抜擢しているため、「なんとか頑張ってほしい」と期待を寄せています。

 このように、任せる側には期待があり、任される側には不安があります。ではなぜ、このようなすれ違いが生じるのでしょうか。次に、介護現場でリーダーになりたがらない理由を考えていきます。

リーダーになりたがらない理由を考える

 介護労働安定センターが発表している令和6年度「介護労働実態調査」の数値を読み解くと、介護職員の意識として、キャリアアップへの期待はあるものの、それ以上に「人間関係」、「働きやすさ」、「休暇の取りやすさ」を重視する傾向がみえてきます。つまり、現場にはリーダーになりたい人が多いとは言い切れません。

 また、介護現場にはリーダーという役割を難しくする要素が多くあります。多職種との連携、シフト作成、メンバーへの働きかけなど、現場業務に加えて運営側の視点も求められます。当然、責任も増していきます。リーダーになっても安心して働ける見通しが持てなければ、「負担が増えることは避けたい」と感じても不思議ではありません。

 介護現場では、実務能力が高い人が評価され、リーダーに選ばれやすい傾向があります。利用者への対応が丁寧で、介護技術があり、記録も正確で、周囲からの信頼も厚い。このような職員は、管理者からみると「次のリーダーにふさわしい」と映ります。

 もちろん、実務能力はリーダーにとって大切な基盤です。しかし、リーダーシップと実務能力は同じものではありません。介護現場のリーダーには、利用者対応や介護技術の指導、サービスの組み立て、場合によっては現場でのとっさの判断なども求められます。現場職員として必要な視点と、リーダーとして必要な視点は異なるのです。

 また管理者は、リーダーに任命する前後の準備期間、役割の明確化、学ぶ機会、相談できる環境を十分に整えられていないことがあります。そう考えると、リーダーがうまく機能しない理由を、本人の資質だけに求めることはできません。リーダーに任命した後の関わり方を間違えると、「なりたくてリーダーになったわけではないので私にはわかりません」という言葉が聞かれる状況につながってしまうのです。

管理者ができる任命前後の支援

 管理者は、組織を運営していくうえでリーダーを任命しなければならない場面があります。しかし、「経験年数が長いから」、「現場での実務能力があるから」という理由だけで任命すると、本人の不安や周囲とのすれ違いが生まれやすくなります。

 職員が安心してリーダーとして従事していくためには、管理者の関わり方が重要です。では、管理者はどのような関わりを持つべきなのでしょうか。

 私は、基本的にはリーダーに伴走する姿勢が望ましいと考えています。任命前後の時期に、管理者がどのように関わるかによって、リーダー本人の受け止め方や成長のしやすさは大きく変わります(表)。

表

1. 指針や役割を明確に言語化する

 「来月からあなたがリーダーです」という言葉だけでは、本人の不安を強めることがあります。まずは、その職員をどのように評価しているのかを伝えたうえで、「うちの事業所、フロア、ユニットをこうしていきたい」という方向性を示す必要があります。そのうえで、「あなたにはこのようなリーダーシップを期待している」と、管理者が具体的に言葉にして伝えることが重要です。役割や期待を理解できれば、職員はリーダーとしての自分をイメージしやすくなります。


2. 任せっぱなしにしない

 指針や役割を明確にしても、それだけでうまくいくわけではありません。リーダーとして働くなかでは、さまざまな問題や困りごとが発生します。そのときに管理者が放置してしまうことが一番の問題です。定期的な面談などを通して、その時々の困りごとや悩みを抱え込ませないように気にかけることが大切です。


3. 職員の前で一人きりにしない

 リーダー以外の職員の前で、リーダーを一人きりにしないことも大切です。リーダーは、他の職員に指示を出したり、注意を促したり、時には方針を伝えたりする立場になります。その場面で管理者がまったく関与せず、リーダーだけに任せてしまうと、本人は孤立感を抱きやすくなります。

 必要な場面では管理者が後ろ盾となり、「これはリーダー個人の判断ではなく、事業所としての方針である」と周囲に伝えることが重要です。


4. 短い会話を日常化する

 面談や会議以外での会話も重要です。管理者とリーダーも人間同士の関わりですから、何気ない場面での会話が日常化すると、自然とコミュニケーションの量が増えます。

 職員目線で見ると、改まった場では相談しにくいことでも、何気ない会話のなかで「そういえば」と話せることがあります。普段から相談しやすい環境をつくり、相談してよい相手がいると感じられることは、リーダーとしての働きやすさにつながります。


5. 任せる範囲を広げる

 少し慣れてきた段階で大切になるのは、任せる範囲を少しずつ広げていくことです。リーダーになったからといって、いきなりすべての業務を任せると、混乱や不安が強くなります。最初から完璧を求めるのではなく、一つひとつ経験を積みながら覚えてもらえるように関わることが大切です。

リーダーが育つ環境をつくる

 「なりたくてリーダーになったわけではない」という言葉の背景には、本人の意欲の問題だけでなく、役割への不安や支援の不足が隠れていることがあります。だからこそ管理者には、リーダーを任命するだけでなく、その人が安心して役割を受け止めていけるように伴走する姿勢が求められます。

 リーダー本人の努力はもちろん大切ですが、本人任せにすれば、不安や孤立感は大きくなります。だからこそ管理者には、任命する前後の関わり方を丁寧に考える責任があります。職員が「任されたからには頑張ってみよう」と思える関わりができれば、リーダーは少しずつ自分の役割を受け止め、現場を支える存在へと育っていくのではないでしょうか。

※ この記事は月刊誌「WAM」2026年9月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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