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第3回:介護施設における生産性向上
〜生産性向上推進体制加算〜

 2024(令和6)年度の介護報酬改定において、介護現場における生産性の向上に資する取り組みの促進を図る観点から、生産性向上推進体制加算が、短期入所系サービスや居住系サービス、多機能系サービス、施設系サービスに新設されました。

生産性向上推進体制加算が新設された背景

 総務省統計局によると、日本の15歳から64歳人口は、2024年4月1日時点で7,376万人いますが、2023年4月1日と比較すると25万人減少しています。なお、10年前の2014年4月1日と2024年4月1日では15歳から64歳人口は、456万8,000人減少しています。

 このことから、今後も生産年齢人口の減少は続くものの、介護ニーズの急増と多様化が進むと考えられています。

 このような状況から、介護施設では、介護の質を確保していくためテクノロジー等を活用することで生産性向上に取り組むことが求められています。

 なお、介護施設の生産性向上については、介護サービスの提供にあたっての工程や事務処理などの過程にあるムダを省くことによる合理化という考えではなく、テクノロジー等を活用し、人が行う業務と機器に行ってもらう業務を分けることで業務改善や業務効率化等が進み、職員の業務負担の軽減につながると考えられています。また、業務の改善や効率化により生み出された時間を直接的な介護ケア業務に充てることで、利用者と職員が接する時間を増やすなど、介護サービスの質の確保、向上につなげるなど、あくまで利用者に対するサービスの質が担保されていることが重要であると考えられています。

生産性向上推進体制加算の算定要件の整理

 生産性向上推進体制加算(U)の算定要件としては、@利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の開催や必要な安全対策を講じた上で、生産性向上ガイドラインに基づいた改善活動を継続的に行っていること、A見守り機器等のテクノロジーを1つ以上導入していること、B1年以内ごとに1回、業務改善の取り組みによる効果を示すデータをオンラインで提出すること。これらを満たすことで算定ができます。

 「見守り機器等のテクノロジー」の要件としては、見守り機器、インカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器、介護記録ソフトウェアやスマートフォン等の介護記録の作成の効率化に資するICT機器とされています。なお、見守り機器とは、利用者がベッドから離れようとしている状態または離れたことを感知できるセンサーであり、当該センサーから得られた情報を外部通信機能により職員に通報できる利用者の見守りに資する機器のことであるといわれています。

 そして、生産性向上推進体制加算(T)では、「見守り機器等のテクノロジーを複数導入していること」とされており、複数導入の解釈として見守り機器をすべての居室に設置し、インカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器をすべての介護職員が使用することとされています。また、介護記録ソフトウェアやスマートフォン等の介護記録の作成の効率化に資するICT機器のすべてを導入していることも要件とされています。また、職員間の適切な役割分担として、介護助手などを活用した取り組みも求められています。そして、1年以内ごとに1回の業務改善の取り組みによる効果を示すデータとして、利用者のQOL等の変化が維持または向上されていることと、職員の業務負担軽減を示すデータとして総業務時間及び当該時間に含まれる超過勤務時間が短縮しており、年次有給休暇の取得状況が維持または向上していることが求められています。

 これらの算定要件から、生産性向上推進体制加算(U)においては、オンラインによるデータ提出は求められているものの、効果の有無までは求められていないため比較的算定しやすいと考えられます。

 独立行政法人福祉医療機構が調査した「2023年度特別養護老人ホームの人材確保に関する調査結果」によると、863施設中「タブレット・スマートフォン」を「導入している」または「導入予定(検討中を含む)」の施設は約79.5%、「介護ソフト(業務記録・報酬請求等)」においては95.8%、「見守り機器(着圧センサー・バイタルセンサー等)」においては75.4%と回答されており、高い割合でテクノロジーの導入もしくは導入予定の施設があるため、委員会などの体制を整備し、データ提出を行うことで生産性向上推進体制加算(U)の算定は可能であると考えられます。

 しかし、同機構が調査した「2022年度特別養護老人ホームの経営状況について」によると、従来型特別養護老人ホームの約48.1%が赤字の状況です。また、ユニット型の場合でも、約34 .5%が赤字の状況です。このように運営すら厳しい状況のため、設備投資に費用を割くほどの余裕がない所が多いと考えられます。このことから、生産性向上推進体制加算(T)では、見守り機器等のテクノロジーを複数導入していることとあわせて、業務改善の取り組みによる効果を示すデータとして実際に業務改善につながった実績が必要となるため、算定をすることに対して後ろ向きになる法人も多くあると考えられます。


生産性向上推進体制加算の算定に向けたポイント

 生産性向上推進体制加算の算定に向けたポイントは、業務改善の取り組みによる効果を示すデータをいつから取るかという点です。生産性向上推進体制加算は人材不足であったとしてもテクノロジー等を導入することでサービスの質を落とさず職員の負担を軽減していくことが目的にあります。そのため、業務改善の取り組みによる効果を示すデータとして加算の(U)では、「利用者の満足度評価」、「総業務時間や超過勤務時間の調査」、「年次有給休暇取得状況の調査」が必要であり、加算(T)では、(U)に加えて「介護職員の心理的負担の軽減」、「機器導入による業務時間の調査」が必要となります。また、加算(T)ではテクノロジー機器等の導入後に3カ月以上継続して生産性向上の取り組みを行った月ごとのデータが必要となるため、事前の調査が必要です。このことから、生産性向上推進体制加算を算定するかに関わらず、月ごとの各データの収集をしておくことを推奨します。これは、テクノロジー等を導入していない施設であっても、現状を知ることで改善のヒントになります。また、その後テクノロジー等を導入した場合、変化を知ることができる重要なデータにもなります。このように、制度を活用して法人組織の改善のためのヒントとすることで新たな戦略立案にもつながります。

 今後、介護業界において先進的な取り組みを実施している施設の評価もより一層進んでいくと考えられます。そのため、データ収集・分析・改善への取り組みを継続して委員会で検討することが、生産性向上の第一歩となります(図表)。



※ この記事は月刊誌「WAM」2024年12月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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