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第4回:高齢者虐待防止の推進
〜高齢者虐待防止措置未実施減算〜

 2021年度の介護報酬改定において、すべての介護サービス事業者を対象に、利用者の人権の擁護、虐待防止等の観点から、虐待の発生またはその再発を防止するための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めることが義務づけられました。なお、2021年度時点では3年間の経過措置期間が設けられたため、実質的には、2024年4月1日から義務化されました。

 今までも、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」の「第三章 要介護施設従事者等による高齢者虐待の防止等」において高齢者虐待の防止等のための措置や通報等は規定されていましたが、2021年度の介護報酬改定の際に、運営基準に関係規程が設けられました。そのため、経過措置期間が終わった2024年4月1日からは、要件を満たさなかった場合に「高齢者虐待防止措置未実施減算」として100分の1に相当する単位数を所定の単位数から減算される仕組みになっています。

高齢者虐待防止措置未実施 減算が新設された背景

 厚生労働省によると、2022年度の養介護施設従事者等による高齢者虐待の相談・通報件数は2,795件あり、そのうち虐待と判断された件数が856件でした。前年度と比較すると、通報件数は405件増加しており、虐待と判断された件数では117件増加しています。また、家族等の養護者による高齢者虐待の相談・通報件数は3万8,291件あり、そのうち虐待と判断された件数が1万6,669件でした。こちらも、前年度より相談・通報件数が1,913件増加しており、虐待と判断された件数では243件増加しています。

 このように高齢者虐待が見える化されたことで関係者の課題認識が強まり、高齢者虐待防止措置未実施減算が新設されたと考えられます。

 なお、虐待の相談・通報件数が増加しているのは、虐待に対する意識が高まったことによるものでもあると考えられます。

虐待の発生要因

 養介護施設従事者等による虐待の種別割合としては、「身体的虐待」が57.6%、「心理的虐待」が33.0%、「介護等放棄」が23.2%、「経済的虐待」が3.9%、「性的虐待」が3.5%となっています。なお、「身体的虐待」には「緊急やむを得ない」場合以外の身体拘束も含まれています。

 また、虐待の発生要因として最も多いものとして考えられているのは「教育・知識・介護技術等に関する問題」で56・1%、次いで「職員のストレスや感情コントロールの問題」が23.0%、「虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制等」が22.5%、「倫理観や理念の欠如」が17.9%、「人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ」が11.6%、「虐待を行った職員の性格や資質の問題」が9.9%、「その他」が3.5%となっています。

 なお、虐待の程度(深刻度)の割合では、最も軽い「1(軽度)」が48.7%、「2(中度)」が42.2%、「3(重度)」が7.5%、「4(最重度)」が1.5%であり、「1(軽度)」と「2(中度)」をあわせると約90%程度と、大半を軽度と中度が占めている状況です。

 深刻度別の介護等放棄の虐待例では、「1(軽度)」の場合、ナースコールを使えない状態にする、多量のパッドを使用し排泄介助や巡回の回数を減じる、転倒の放置、ケアプランの期限切れ等があげられており、心理的虐待の虐待例では「またトイレなの」、「バカ」等の発言、介護中の乱暴な声がけ、怒鳴る、ベッドを蹴り恐怖心を与える、威圧的な態度で指示命令、失禁を咎める等があげられています。これは、利用者の意思を尊重した利用者本位のケアではなく、職員の主観や都合で行う職員本位のケアになっていることが虐待発生の大きな要因になっていると考えられます。


虐待を防止するために必要な認識と対応

 虐待防止措置未実施減算では、@虐待の防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催するとともに、その結果を従業者に周知徹底を図ること、A虐待の防止のための指針を整備すること、B従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること、C各措置を適切に実施するための担当者をおくこと、が求められています。この4つの要件を満たすことで減算は免れますが、確実に虐待を防止できるかは、取り組みの内容次第です。

 介護の施設、とくに入所施設の場合、シフトで勤務を行っている関係で、直属の上司と同じ時間に仕事をする機会が少ない場合があります。利用者本位のケアから職員本位のケアに変わっていたとき、管理者の把握が遅くなることで、虐待に発展すると考えられます。そのため、個々の職員が日頃どのように利用者と接しているかを把握するためには、工夫が必要です。

 では、どのように虐待を防止するかと考えた場合、どこまでの範囲を事業所では虐待として考えるかということが重要になります。例えば、介護等放棄「1(軽度)」の虐待例として「多量のパッドを使用し排泄介助や巡回の回数を減じる」(表参照)とありますが、夜間帯の場合、利用者の睡眠を優先するために、日中に使用しているパッドより大きいパッドを使用することでパッド交換の回数を減らすというケースがあります。これは、あくまで「利用者の睡眠を優先する」という利用者本位の考えがあるため、虐待には該当しないと考えられます。しかし、職員のなかには「利用者の睡眠を優先する」という目的が認識できていないことで、「パッドの大きさを変えることで排泄介助の回数を減らすことができる」と認識した場合、日中夜間を問わずパッドの大きさを職員本位の考え方で変えてしまう可能性があります。もしかしたら、職員によっては業務効率化の一環としてとらえる人もいるかもしれません。


 このように、ケアにはそれぞれ目的があり、その目的から乖離してしまった場合、虐待につながるケースがあるということを管理職のみならず、職員全員が認識することで虐待の防止につながると考えられます。

 この認識を高めるためにも、委員会や研修などで今一度、ケアの目的と乖離してしまうことで発生している虐待事例などの共有をしていくことが、虐待防止の第一歩となります。


※ この記事は月刊誌「WAM」2025年1月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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