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第7回:社会福祉法人のガバナンスの確保
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社会福祉法人の経営ガイド

この連載では、社会福祉法人という対象に絞った経営の考え方を皆さんとともに共有していきます。


<執筆>
法律事務所First Penguin
代表 菅田 正明


社会福祉法人制度改革において「経営組織のガバナンスの確保」が求められ、社会福祉法人の機関(理事会、評議員会など)について多くの改正が行われました。本稿では、社会福祉法人におけるガバナンス、とくに社会福祉法人制度改革で強く求められた守りのガバナンスを確保するために、法人内の機関にどのような役割が求められているのかを確認していきたいと思います。

評議員(会)の役割

評議員会は、改正前は諮問機関でしたが、改正後は必置の議決機関となり、法人運営に係る重要事項、役員の選任・解任などを決定する重要な機関として位置づけられました。この権限は、株式会社における株主総会に相当します。

それでは、社会福祉法が評議員会を必置の機関とし、上記の重要な権限を付与したのはなぜなのでしょうか。社会福祉法は、一般法人法における一般財団法人の規定を多く準用しているのですが、一般法人法の立法担当者は『一般社団法人における社員総会のような機関は、元来存在しないことから、業務執行機関である理事が法人の目的に反する恣意的な運営を行うことが懸念される。評議員会を法定の必置機関として、理事、監事および会計監査人の選任や定款変更等、一般財団法人の基本的事項について決議する権限を与え、これを通じて理事を牽制・監督する役割を担わせることとした』と解説しています。

社会福祉法人も、社団法人の社員や株式会社の株主のような存在がいないため、業務執行機関である理事(会)が恣意的な運営を行うことが制度的に懸念されるところです。そのため、評議員会に役員の人事権や法人の基本的事項について決議する権限を付与し、これらの権限を通じて理事(会)を牽制・監督させる必要があったと考えられます。

評議員会がこれらの権限を通じて理事(会)を牽制・監督することを想定している主たる場面は、1年間の事業報告が報告され、計算書類等について決議する定時評議員会になります。また、定時評議員会の招集の際には、監事による監査報告が送付されることになっていますので、評議員(会)としては、監査報告の内容及び定時評議員会の議事を通じて、理事(会)の業務執行や意思決定が不透明・恣意的なものとなっていないか、自らの知見に基づいて積極的に確認することが求められるのです。そのような確認は誰でもできるわけではないため、「社会福祉法人の適正な運営に必要な識見を有する者」の中から評議員を選任することになっていると考えられます。

この牽制・監督機能を実効性のあるものにするために評議員会に付与されたのが、理事の選任・解任権という権限であり、不適正な運営をする理事(長)から理事職をはく奪することができるようになっています。この理事の選任・解任権はガバナンスにおいて最も重要といってもよい権限であり、この権限が適切に行使され得ることがガバナンスの根底を支えることになります。つまり、理事(長)が不適正な運営を行った場合には、評議員会によって理事職をはく奪されるということが、当該法人において現実味のあるものなっていることで、はじめて牽制機能・役割が実効性のあるものになるのです。

この評議員会に与えられた権限を適切に行使しうる評議員でなければ、評議員(会)に求められる牽制機能・役割は絵に描いた餅に終わってしまいます。もしそのような識見を有さない又は牽制・監督を怠る評議員がいる場合には、評議員の構成を見直さなければ、評議員(会)による「ガバナンス」は機能しません。

理事(会)の役割

「ガバナンス」において、理事(会)に求められる大きな役割は、@理事会での意思決定を透明・公正に行うこと、A理事長等の業務執行が理事会の決定に基づいて行われているかの監督、B理事会が権限を委任した理事長等による意思決定及び業務執行が不透明・恣意的に行われていないかの監督になります。

@ないしBを行う主たる場面は、理事会の場だと考えられます。そのため、まずは理事が理事会に参加することが重要であり、参加する機会を確保するため、原則として1週間前までに招集通知を発しなければならないとされています。理事は、理事会に参加して、例えば自動車の購入が議題・議案として上程された場面においては、質疑応答などの審議を通じて、当該自動車の購入が法人の業務に必要か、契約相手が恣意的に決められていないか、金額は妥当かといったことを確かめたうえで、各理事が自らの知見に基づいて不公正・不透明な内容であると判断すれば、当該議案を否決することによって、不公正・不透明な意思決定がされることを防止することが期待されています。

次に、AおよびBですが、この監視・監督ができるようにするため、改正後の社会福祉法では、原則として3カ月に1回以上(定款の定めによって、毎会計年度に4カ月を超える間隔で2回以上とすることもできます。)の頻度で、理事長等は職務執行状況の報告を理事会で行うこととなっており、当該報告を省略することは認められていません。理事(会)としては、この職務執行状況の報告を受けて、理事長等が適切な職務執行を行っているのかを事後的に監視・監督することになります。

最後に、職員による不祥事の防止についても触れたいと思います。理事長や担当の業務執行理事には、職員を監督する義務があると考えられているため、不正な行為がされていないか監督しなければなりません。しかし、法人の規模が大きくなればなるほど、一職員の行動を監督することは困難になります。そこで、必要になってくるのがいわゆる内部統制システムの構築・運用です。ここでいう内部統制システムとは、誤解を恐れずに一言でいえば、不正を防止する仕組みのことであり、横領事案であれば、横領がしづらくなるような制度や万が一横領がされた場合にも速やかにそれを発見できるような仕組みのことを指します。

この内部統制システムの基本方針の決定は理事に委任できないため、理事会で決議する必要があります。そして、その基本方針に基づいて、具体的な内部統制システムを構築して、運用する義務が理事長や担当の業務執行理事にはあると考えられていますので、適切な内部統制システムを構築・運用することで、職員による不祥事を防止することが求められます。

図
監事の役割

監事の職務として「理事の職務の執行を監査する」と規定されているところ、監事は2人以上でなければならず、監事には「社会福祉事業について識見を有する者」および「財務管理について識見を有する者」が含まれなければなりません。前者がいわゆる業務監査に、後者が会計監査に対応する者と想定されますが、監事は、一人ひとりがその権限を独立して行使することができる独任制であるため、前者として選任された者であっても会計監査の責任を負わないというものではありません。

そして、理事の職務の執行を監査するため、監事には、理事会への出席義務があり、理事会の意思決定の状況、理事(会)が理事への監督義務を履行しているか、理事長等が内部統制システムを適切に構築・運用しているか等について監視・検証することが求められています。さらに、法人の状況によっては、理事会以外の重要な会議(例えば、経営会議など)に出席する、実際に施設や法人本部に赴いて関係する書類を確認するとともに、職員から直接ヒアリングをするといったことを行い、理事会に出席しているだけでは確認できない実態を把握することが必要な場合もあります。監事には、このような調査をする権限が認められていますので、適切に当該権限を行使しながら、理事の職務の執行を監査することが求められます。

まとめ

社会福祉法人におけるガバナンスを確保するためには、社会福祉法が求める機関を設置すれば十分ということでは決してありません。各法人において選任された理事等が、これらの機関に求められている役割を正確に理解し、自法人の実情を踏まえたうえで実効性のある監視・監督が行える取組や工夫をすることが求められるのです。

※ この記事は月刊誌「WAM」2020年10月号に掲載されたものを掲載しています。

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