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第6回:社会福祉法人におけるガバナンスとは
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社会福祉法人の経営ガイド

この連載では、社会福祉法人という対象に絞った経営の考え方を皆さんとともに共有していきます。


<執筆>
法律事務所First Penguin
代表 菅田 正明


平成29年4月1日に改正社会福祉法が全面的に施行され、すでに3年が経過しました。この法改正では、社会福祉法人の「公益性・非営利性の徹底」、「国民に対する説明責任の履行」及び「地域社会への貢献」という視点が掲げられ、それらに対応するように、「経営組織のガバナンスの確保」、「運営の透明性の確保」及び「財務規律の強化」が図られることになりました。本稿では、これらのうち「経営組織のガバナンスの確保」という観点から、社会福祉法人に求められる「ガバナンス」の意味について考えてみたいと思います。

社会福祉法人に求められるガバナンスの意味

「経営組織のガバナンスの確保」とありますが、そもそも「ガバナンス」とはどういう意味なのでしょうか。「ガバナンス」という言葉は、社会福祉法には登場しません。そのため、論者によってその言葉のニュアンスが微妙に異なることも多く、「コンプライアンス」と同義のように使われることもあります。そこで、本稿における「ガバナンス」の意味を考える必要がありますが、株式会社東京証券取引所が策定した「コーポレートガバナンス・コード」における記述が参考になります。このなかでは、「『コーポレート・ガバナンス』とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえたうえで、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する」と定義しています。これを社会福祉法人に当てはめれば、社会福祉法人における「ガバナンス」とは、「利用者・職員・地域社会等の立場を踏まえたうえで、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」ということになります。

図1
ガバナンスの二つの側面

この定義からすると、「ガバナンス」には二つの側面があることになります。一つは、「透明・公正な意思決定を行うための仕組み」です。「透明」とは、適正な手続を行ったうえで、そのことが外部から確認できることであり、「公正」とは、恣意的でなく正しい意思決定を意味すると考えられます。この側面では、社会福祉法人として恣意的・不公正な意思決定を行わず、かつ、行わせないために透明性の高い仕組みを構築することが求められます。これは、法令遵守や不祥事の防止といった点に着目した、いわば守りのガバナンスであり、ブレーキ機能として作用しうる側面といえます。社会福祉法人制度改革で意識的に着目されていたのは、この守りのガバナンスだったと思われます。法改正に先立ってまとめられた社会保障審議会福祉部会報告書(以下「福祉部会報告書」)では、「一部の社会福祉法人において指摘される不適正な運営には……法人の内部統制による牽制が働かず、理事・理事長の専断を許した結果生じたものが見られる」、「理事・理事長の役割・権限・義務・責任を明らかにし、理事会による理事・理事長に対する牽制機能を制度化する」、「必置の評議員会を議決機関として法律上位置付け、理事・理事長に対する牽制機能を働かせるため」とされており、守りのガバナンスを強く意識していることがわかります。

もう一つの側面は、「迅速・果断な意思決定を行う仕組み」であり、これは、例えリスクがあったとしても、適正なリスクであればスピード感をもって思い切った経営判断ができる仕組みのことを意味すると考えられます。これはいわば攻めのガバナンスであり、アクセル機能として作用しうる側面となります。この攻めのガバナンスについては意識的に議論されていないようにみえますが、福祉部会報告書では「社会福祉法人については、その本旨に従い、他の事業主体では対応が困難な福祉ニーズに対応していくことが求められる。」「社会福祉法人は、社会福祉事業に係る福祉サービスの供給確保の中心的役割を果たすだけでなく、既存の制度の対象とならないサービスに対応していくことを本旨とする法人と解されている。地域福祉におけるイノベーションの推進は、社会福祉法人の社会的使命である。」とされているところであり、このような対応を行うためには、積極的な意思決定ができる攻めのガバナンスが必要となるはずです。

図2
二つの側面がバランスよく機能することが重要

そして、これら二つの側面は、バランスよく機能する必要があり、一方だけが強くなりすぎることは適切ではありません。守りのガバナンスばかりが強調されれば、リスクのある新しいことに挑戦することができなくなり、逆に、攻めのガバナンスばかりが強調されることになれば、理事長等の意思決定者が暴走した場合に止められなくなってしまいます。

筆者としては、「ガバナンス」をこのように捉えており、その最終的な目的は、社会福祉法人として持続的な成長と中長期的な法人価値の向上を図ることだと考えています。より具体的には、自主的にその経営基盤の強化を図るとともに、その提供する福祉サービスの質を向上させるため及び福祉サービスを積極的に提供するため(社会福祉法第24条参照)の意思決定を行うことで中長期的な発展を目指すことが目的になります。

社会福祉法人制度改革の背景には、一部の社会福祉法人による不祥事があり、守りのガバナンスを強化する必要性があることは間違いありません。しかし、守りのガバナンスだけがあまりに強調されるようなことがあれば、法令遵守や不祥事の防止ばかりを気にした消極的な法人経営を推奨しかねず、それは社会福祉法人の目指すべき姿ではありません。したがって、「ガバナンス」には守りのガバナンスのみならず、攻めのガバナンスという側面があることを忘れてはなりません。

そして、この『ガバナンス』を制度として支えるのが、社会福祉法が用意した評議員(会)、理事(会)、監事及び会計監査人による牽制・監督・監査機能になります。その具体的な内容については、次号で検討したいと思いますが、社会福祉法人制度改革で求められた「経営組織のガバナンスの確保」の意義は、法で定められた機関を設置し、各手続を履践すること自体ではありません。これらはあくまで手段であり、当該機関の運営・手続・役割等を通じて、意思決定者を事前・事後に牽制・監督・監査することで、不透明・恣意的・不公正な意思決定がされることを防止し、社会福祉法人として持続的な成長と中長期的な法人価値の向上を実現することにあるといえます。

図3

※ この記事は月刊誌「WAM」2020年9月号に掲載されたものを掲載しています。

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