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◆◆ 平成22年度 ◆◆

平成22年度 福祉・医療経営セミナー報告

−「軽費老人ホーム経営セミナー」報告−【大阪会場】
「地域包括ケアシステムを支えるために軽費老人ホームが目指すもの」

 経営支援室 経営企画課 筒井 迪代

 経営支援室では、福祉・医療施設に対する経営支援事業を行っており、その一環として各種経営セミナーを開催しています。
 今回のコラムでは、2月3日に大阪にて開催した「軽費老人ホーム経営セミナー −地域包括ケアシステムの構築と軽費老人ホームの将来−」の中から、社会福祉法人吉川福祉会 高齢者総合福祉施設さざんかの郷 理事長兼総施設長の 西澤 正一 氏 による「地域包括ケアシステムを支えるために軽費老人ホームが目指すもの」をテーマとした講義について、ご紹介します。
高齢者総合福祉施設さざんかの郷 理事長兼総施設長の 西澤 正一 氏

 西澤氏が経営する吉川福祉会は、兵庫県三木市吉川町という人口8万2200人、高齢化率は42%という町にあります。ここ数年で急速に高齢化が進んだこの町で、同法人は町内唯一の社会福祉法人として、地域を支えています。
 吉川福祉会は、開設当初は特養とケアハウス、デイサービス事業でスタートしましたが、町内で必要な福祉を追求していった結果、現在では、訪問介護事業者や居宅介護支援事業、生活介護など障害者の自立支援事業、配食事業や介護予防生きがい対応事業まで、合計20もの事業を行っています。また、西澤氏はこうした介護保険事業に留まらず、利用者が最後まで「住み慣れた自宅や地域で安心して暮らせる」ために、NPO法人を立ち上げ、地域の防犯のための見守り活動や、地域安全パトロール、認知症および生活支援サポーターの養成を行ったり、地域住民を取り込む行事の企画や、施設の食堂の開放など、様々な活動を行って来られました。こうした取り組みは、利用者も法人の職員も共に行うことで、利用者や施設を地域の一員として認めてもらうだけでなく、職員も楽しめるようなイベントの開催や同好会等を結成することで、利用者や職員同士の繋がりができます。また、職員の資格取得支援や講習会等の開催など、職員の専門性を高め、利用者サービスの向上と地域貢献に繋げることを法人の理念としています。
 その他、西澤氏は個人で少年鑑別所や刑務所の教育訓練等も担当しており、許可を得て持ってきていただいた刑務所の写真など、日常なかなか知ることのできない施設の現状についても紹介していただきました。
 また、西澤氏は講義の中で、団塊の世代が75歳以上となり高齢化がピークとなる2025年には、病気や介護が必要な状態になっても適切なサービスを利用して個人のQOLの追求が可能となるよう、医療と介護を通じた個々人の心身状態にふさわしいサービスが切れ目なく提供できるような地域包括ケアシステムの構築が必要であると強調されました。このシステムは、国の検討部会でも多くの議論がなされ、住み慣れた地域や住居での生活の継続、そして本人の選択、自己能力の活用などを基本政策として掲げています。しかし、地域包括ケアシステムを本格的に進めるためには、軽装備で多様な住宅を前提として、少人数体制で、元気な方から要支援・要介護の方までの幅広い対象者に対して、個々のニーズに応じたサービスが提供される必要がありますが、このことは、まさにこれまで軽費老人ホームやケアハウスが果たしてきた役割と専門機能であると言えます。
 このように常に現場での実践を行い、生活支援の重要性について提言してきた軽費老人ホーム・ケアハウスは、地域包括ケアシステムの構築に向け、今後はその存在価値と実践を世に知らしめていくことが必要となります。
 講義の最後に、西澤氏は「福祉とは、福(お金、心が豊かで余裕がある)と祉(人間同士の支え合い、思いやり)の両方が整ってはじめて「福祉」となる。きれい事やうわべだけでは人を幸せにすることはできない。利用者や家族の喜びと自分の理念を磨き、自分のやり甲斐を求めよう。また制度に則った事業展開だけでなく、その地域性に応じた様々な先駆的な実践を、利用者だけでなく自らが地域のために展開し、反対に制度を動かしましょう。」との熱い思いを伝えていただきました。
 受講いただいたお客様からも、「様々なアイデアがとても参考になった」、「実践活動に敬服します」等のご意見をいただき、西澤氏の制度の枠を超えた様々な取り組みが、これからの軽費老人ホームの将来への新たな道しるべとなったのではないかと考えています。

    【講演内容】
    「軽費老人ホームを取り巻く課題と将来への経営展望」
    <講師>全国軽費老人ホーム協議会 会長 川西 基雄 氏(社会福祉法人サンシャイン会 理事長)

    ○「福祉医療機構の融資からみた軽費老人ホームの経営戦略」
    <講師>独立行政法人福祉医療機構 福祉貸付部長 中井 孝之 

    「地域包括ケアを支えるために軽費老人ホームが目指すもの」
    <講師>社会福祉法人吉川福祉会 高齢者総合福祉施設さざんかの郷 
    理事長兼総施設長 西澤 正一 氏

    「軽費老人ホーム経営の現状と居住型施設戦略」
    <説明者> 独立行政法人福祉医療機構 経営支援室 経営企画課長 千葉 正展

     経営支援室では、これからも、福祉・医療の経営に関するトピックをテーマに、現場の実践者などを講師に迎え、経営セミナーを開催させていただきます。
     今後の開催予定は
    http://hp.wam.go.jp/guide/keiei/seminar_information/tabid/667/Default.aspx です。
     お申込みは、Webからも可能ですので、是非、ご検討ください。