当機構の経営支援室は、平成23年12月9日ベルサール九段イベントホールにおいて、「今後の精神科病院の機能改革の方向性」をテーマに、現在の政策の流れを踏まえたうえで、今後精神科病院の機能改革をどのように進めていくべきかについて、急性期対応や現在問題となっている認知症対応などにも触れながら、現在実践されている事例を中心に今後の方向性を探り、将来に向かっての持続可能性のある経営基盤を確立するためのご参考としていただけることを目的として、セミナーを開催しました。
最初の講演は、社会医療法人城西医療財団 理事長・総長 関 健 氏から「全人的医療の実践を通じて見えてきた精神科病院のこれから」と題して、実践事例の紹介が行われました。
その後、当機構の医療貸付事業の紹介を行い、午後の一番目に、医療法人財団青仁会 理事長、社団法人日本精神科病院協会 常務理事 千葉 潜 氏から「現在の政策動向の流れと精神科病院の機能改革の方向性」と題して講演がありました。
最初に精神医療と精神科病院の「これまで」として、「クラーク勧告」、「精神保健福祉分野における制度改革の経緯」、「措置入院患者数及び措置入院費」、「通院患者数及び通院医療費(予算額)」、「精神保健医療福祉の改革ビジョン(平成16年9月)」などについて、精神科病床が増加した経緯などについて説明がありました。
次に精神科医療の現状として、「精神に係る入院患者数・外来患者数の推移」、「一般診療所数及び精神科標榜診療所数の推移」、「精神疾患外来患者の疾病別内訳」、「精神病床入院患者の疾病別内訳」、「精神病床の平均在院日数の推移」、「精神科入院期間別構成比」等から、精神にかかる入院患者数・外来患者数は増加傾向が見られ、外来患者では、躁うつ病などの気分障害やアルツハイマーが多くなってきていること、一方、入院患者では統合失調症入院患者数は減少傾向にあること、65歳以上の入院患者が多くなってきていることなどの説明がありました。
次に精神科医療と認知症では、介護領域での認知症患者数の推計、医療領域での推移、認知症の外来患者数が年々増加している現状の説明の後、退院可能性ありの患者が退院に結び付かない理由として、転院・入所順番待ちの他に、家族(または本人)の了解が得られないことなどを問題点として取り上げられました。
今後の精神科医療における認知症への支援としては、「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム(第2R)認知症と精神科医療 中間とりまとめ」の資料を用いて説明がありました。
次に精神科医療と医療経済としては、一般病院と比べると精神科病院の入院費用は低く抑えられているとして、精神科入院に係る診療報酬と主な要件や平成22年度の診療報酬改定の内容について説明がされた後、中医協説明提出資料から平成24年度の診療報酬改定について、それぞれの課題と論点について紹介がありました。
続いて、精神科病院と精神医療の「これから」として国の施策の方向について、精神科保健医療体制の再構築の話や、第3期障害福祉計画(都道府県)における病院からの退院に関する明確な目標値の設定などについて説明がありました。
その他に、「日精協の精神医療改革戦略ビジョン」についての紹介や、「精神科医療の方向性」、「転換施設の財源と経済」、「介護サービスへの転換」、「障害福祉サービスへの転換」、「外来通院治療・地域医療・在宅医療とアウトリーチサービス」、「高齢者サービス事業の展開」といった事項について紹介され、最後にこれからの経営のキーワードとして「集約化」、「包括化」、「多様化」、「多角化」を挙げられました。
以上のような話の後、「精神科医療における急性期医療への取り組み」として医療法人財団 厚生協会 大泉病院 副院長 今坂 康志 氏の実践事例紹介の講演の後、「経営分析参考指標からみた精神科病床の経営実態」として当機構の経営企画課から説明を行いました。
今後の福祉・医療経営セミナーの予定は、
http://hp.wam.go.jp/guide/keiei/seminar_information/tabid/667/Default.aspx
です。