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◆◆ 平成22年度 ◆◆

平成22年度 福祉・医療経営セミナー報告

−「慢性期医療経営セミナー」報告−【東京会場】
「地域包括ケアシステムの一翼を担う慢性期医療の役割」

 WAMNET中央センター長 長尾 恵吉

 当機構の経営支援室は、平成22年11月19日、全社協・灘尾ホールにおいて、医療機関の経営者等を対象に「医療提供体制の再構築を支える慢性期医療の経営戦略」と題して医療経営セミナーを開催しました。
 慢性期医療を担う医療機関は、急性期医療の受け皿や在宅との連携、リハビリテーションの充実などのニーズに応える機関として、さまざまな役割を果たしています。
 その重要性は、22年度の診療報酬改定においても、在宅患者や介護保険施設入所者の軽度悪化による入院受入れへの報酬新設をはじめ、急性期医療の後方病床機能への評価にも表れております。
 こうした中、本年4月に公表された「地域包括ケア研究会報告書」では、「病気や介護が必要な状態になっても、個々人の心身状態にふさわしいサービスが切れ目なく提供できるような『地域包括ケアシステム』の構築」が不可欠とされ、国においては、「新しいサービスの定着・普及を図り、2025年までに生活圏域における量的な整備を完了することが必要である」と提言されています。
 そこで、当機構では、こうした観点から、在宅を支援する医療機関の実践事例などを題材に、これからの慢性期医療の経営戦略について、安定した経営基盤を築くための方策を皆さんとともに考えることを目的としてセミナーを企画しました。
慢性期医療経営セミナー風景
 最初に、一般社団法人 日本慢性期医療協会 会長 武久 洋三 氏から「地域包括ケアシステムの一翼を担う慢性期医療の役割」と題して講演が行われました。講演は、自らの病院の慢性期医療の症例や診療報酬改定への取り組み、職員採用など実例を織り交ぜ、さらに今後の医療施策の方向を踏まえた内容でした。

 (講演要旨)
 急性期医療、慢性期医療の定義は人によってバラバラであるが、急性期病床は「急性期治療が終了して数日間」と定義すべきで、慢性期医療にあっては、高度急性期治療後の患者の医学的治療だけでなく、リハビリテーション、看護・介護ケア、栄養ケアなど様々な方面からサポートする必要がある。
 2003年8月末までにその他の病床を一般病床と療養病床に分けて届け出ることとなり、それまでに療養病床の基準を満たせないところは一般病床としてしか届出ができなかった。急性期病床と言われる一般病床の中には慢性期の入院患者が10万人以上含まれている現状がある。
 厚生労働省「医療施設・介護施設の利用者に関する横断調査(速報値)」(平成22年6月実施)から医療の提供状況を見ると、療養病棟は気管切開・気管内挿管、喀痰吸引、経鼻経管・胃ろうなど、重度患者を一般病棟より多く受け入れている。
 高齢化が進む2025年の医療介護体制シミュレーションを見ると、医療・介護が必要な人は現在より300万人程度増加し、大半が在宅での対応となる。「まともな慢性期医療がなければ急性期病院は成り立たない」や「中小病院は在宅療養支援の拠点病院に」という意見もあり、高い山に登って周りを見渡し、自分の病院の立ち位置を理解し、地域で信頼される在宅療養支援病院になることが重要である。
 平均在院日数の推移で考えると、現在は急性期、一般病床が20日、慢性期、療養病床が60〜180日、その先は介護期であるが、近未来においては急性期10日、慢性期30〜90日、その先は介護期となる。
 今後、15年間で年間死亡者が1.5倍の160万人になるとするならば、高齢患者の医療需要は2倍以上となり、病院のベッド数を増やさなければ回転率を2倍にしないといけない。
 慢性期病院の3大重要機能は、@回復期機能、A重度慢性期機能、B在宅支援機能で、2大必需機能は@癌患者支援機能、A認知症治療機能である。
 良質な慢性期医療がなければ日本の医療は成り立たない。また、病院は適切な医療を提供することで患者を良くして在宅に帰すことであり、医師としての誇りをもって診療にあたっていただきたい。
 
 午後からは実戦的な取り組み事例等の発表が行われました。

 今後の福祉・医療経営セミナーの予定は、
http://hp.wam.go.jp/guide/keiei/seminar_information/tabid/667/Default.aspxです。

    【講演内容】
    「地域包括ケアシステムの一翼を担う慢性期医療の役割」
    (講師)一般社団法人 日本慢性期医療協会 会長 武久洋三 氏

    「医療貸付事業に関する融資制度のごあんない」
    (説明者)独立行政法人 福祉医療機構 医療貸付部 医療審査課

    「医療経営の信頼性と融資判断」
    (講師)独立行政法人 福祉医療機構 理事 瀬上清貴

    「地域密着型で在宅を支援する我が法人の経営戦略@ 〜地域支援型医療拠点への挑戦〜」
    (講師)医療法人 池慶会 池端病院 理事長 池端幸彦 氏

    「地域密着型で在宅を支援する我が法人の経営戦略A 〜ペガサスの経営戦略〜」
    (講師)社会医療法人 ペガサス 馬場記念病院 理事長・院長 馬場武彦 氏

    「慢性期医療機関の経営分析と経営改善へのヒント」
    (説明者) 独立行政法人 福祉医療機構 経営支援室 経営企画課