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◆◆ 平成21年度 ◆◆

公表素案から読む 社会福祉法人会計基準一元化の方向

第1回 会計基準一元化の背景と目的

 経営支援室 経営企画課長 千葉正展

 厚生労働省雇用均等・児童家庭局、社会・援護局、障害保健福祉部、老健局は、去る1月5日に社会福祉法人の新たな会計基準の素案を、関係団体に対して説明した。社会福祉法人の事務現場の悲願だった会計基準の一元化の動きのアウトラインが見えてきた。そこで、今回からの本コラムでは、一元化に向けての考え方がどのように整理されつつあるのかなどについて、公表されている資料から読み解いてみることとしよう。

    1.会計基準一元化の背景と目的

新基準(素案)を作成する背景と目的
        資料:厚生労働省
        注)平成21年12月現在の状況を記載した資料であり、未確定事項も含まれる。

(ここに注目!)
 今回の社会福祉法人会計基準の一元化のねらいは、@これまで法人の実施する事業によって異なる会計処理ルールが併存してきたものを解消すること、A社会経済の状況を受けて社会福祉法人の果たすべき説明責任やより効率的な経営に資する情報の提供、B国民に対して簡素でわかりやすい会計情報の提供などが挙げられている。
 さらに注目すべきことは、近年の公益法人制度改革を受けた新たな公益法人会計基準における手法等も視野に入れていることから、社会福祉法人の中の会計基準の整理だけでなく、いわゆる経済社会全体としての「会計基準のコンバージェンス(収斂)」の流れも意識したものとなっていると考えられる。
 今後注目していくべきことは、社会福祉法人という特別の法人制度の固有性と会計基準のコンバージェンスをどこで折り合いをつけていくかという点だ。なぜなら、一元化した新・社会福祉法人会計が仮に公益法人会計基準や企業会計原則と同じ内容であるのなら、そもそもそのような会計処理ルールを個別に策定する必要がない。
 しかし社会福祉法人には社会福祉法人制度のもとで果たすべき説明責任があるはずだし、社会福祉の各種制度に整合した経営コントロールのための固有の会計情報もあるはずだ。今後公表されるだろう詳細案を注目したい。