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◆◆ 平成21年度 ◆◆

公表素案から読む 社会福祉法人会計基準一元化の方向

第16回 新たな会計手法の導入 (4)退職給付会計

 経営支援室 経営企画課長 千葉正展
     
    16.新たな会計手法の導入 (4)退職給付会計

公益法人会計基準(平成20年4月)に採用されている会計手法の導入
        資料:厚生労働省
        注)平成21年12月現在の状況を記載した資料であり、未確定事項も含まれる。

(ここに注目!)
 新たな会計手法の導入の第4点目は、退職給付会計である。
現行の会計基準では、「退職債務の引当て」という表題で規定がなされている。その原則法では、「職員に対して退職金を支給することが定められている場合には、将来支給する退職金のうち、当該会計年度の負担に属すべき金額を当該会計年度の事業活動収支計算における支出として繰り入れ、その残高を負債の部に退職給与引当金として計上する」とされている。ただし、この計算方法による場合は、「個々の職員について、将来支給する退職金のうち社会福祉法人が負担することになる額を見積もり、その額を現在価値に割り引いて」というように、保険数理により個々の職員の今後在職年数と退職時の支給額を割り出して、現在価値にする事務負担が大きな計算方法だ。そこで現行の基準では「この計算方法採用することが困難な場合」、簡便法として期末要支給額基準、つまり保険数理計算によらずに、当該会計年度末に仮にその時在職する職員すべてが退職したと仮定した場合に支払わなければならない額を元に法人が当該会計年度に負担すべきコストを割り出そうという仕組みをとっている。
 今回の見直し案では、この原則法の取扱いに変更はないと考えられるが、簡便法である期末要支給額を適用できる基準を明確にするのではないかと考えられる。(現行は「困難な場合」という客観性に乏しい基準)
 いずれにしても、このような処理は、社会福祉法人が独自の退職金制度を有して、そのための債務を明確にしなければならない場合に問題となるものだ。というのも、現在社会福祉法人の職員の退職金については、法人独自の制度でなく、当機構が実施している社会福祉施設職員等退職手当共済制度や都道府県や社協等が実施している退職共済制度などで対応している場合が大半だからだ。これらの制度に加入している場合には、これら原則法によらない処理となる(詳細は後述)。