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経営サポート事業

「介護福祉市場における金融機関からの資金調達」

 株式会社 東京都民銀行 医療・福祉事業部 部長 上原 敦 氏

 独立行政法人福祉医療機構 経営サポートセンター

 コンサルティンググループ グループリーダー 星野 暢宏

 

  介護事業者にとって、金融機関(銀行やWAM)からの融資の存在は非常に大きいものです。一方で、「融資をしてもらうために何が必要なのか」といった、介護事業者からの金融機関の融資に対する疑問は尽きません。

  本プログラムでは、東京都民銀行 医療・福祉事業部長の上原氏を迎え、当機構経営サポートセンターコンサルティンググループリーダーの星野と、金融機関からの融資を受けるうえで重要なポイントや金融機関との付き合い方等について対談していただきました。

 

 

医療福祉事業、手探りのなかで始動

 

星野:はじめに上原さんに東京都民銀行の医療・福祉・介護分野への取り組みについてお話いただきます。よろしくお願いします。

 

上原:私の所属している医療・福祉事業部の取り組みをお話させていただきます。創部時の15年前はというと、第4次医療法が改正され、病院建て替えのニーズが高まっていました。このニーズに対して支援ができないか、ということで平成14年に医療・福祉事業部は設立しました。当時は、医療福祉事業を首都圏の地場産業として位置づけ手探りのなかでスタートしました。東京は人口が集中しており、医療福祉事業の需要が高いことから、平成23年6月に「医療・福祉事業部」として本部組織の独立部に格上げされました。

 

 

「医療・福祉事業部」は専門知識とフットワークを兼ね備えた部隊

 

上原:業種に特化(医療・福祉・介護)した部隊は、医療・福祉事業部だけです。当行の戦略的部署としての位置づけでもあります。本部のサポート部隊ではなく、担当者が直接、病院や介護施設等を訪問し、通常の支店担当者と同様に、新規取引開始後も本部の営業担当が継続して担当します。つまり、本部のサポート部隊の専門知識と支店の営業担当者のフットワークを兼ね備えているといえます。数多くの事例と実績による高い提案力により、お客さまからも好評をいただいています。

 

 

貸す側に「安心」される事業所づくりを

 

星野:金融機関の担当者が貸したくなる医療・福祉・介護事業者について伺いたいと思います。たとえば、代表者役員の人柄の良さや、その方から語られるビジョンや夢がハッキリしている場合、貸す側としては安心できます。

 

上原:そうですね。やはりビジョンがハッキリされている方や、「地域の発展のために」というところには共感しますし、応援やサポートをしたいと思います。他にも、働いている方がイキイキ、キビキビ、ニコニコしているのを見ると、職場環境という点から、貸す側としては安心しますね。

 

大型スクリーンを挟み、左端に上原氏、右端に星野の対談風景写真

 

 

透明性の確保で信頼関係構築

 

星野:決算書や透明性についてはどうですか?決算書の数字が悪くても、その解消に向けた道筋が通っていたり、あるいは数字の根拠がしっかりとしていて、こちらが理由を尋ねても明確な回答が返ってきたりするような決算書だと金融機関としても安心できます。

 

上原:そうですね。たとえば、何ページか抜けている決算書を示されることがあります。事業所側として当然銀行に見せたくない勘定があるのはわかります。ただ、全て開示していただいた方が、長い期間のお付き合いにおいて、信頼関係がスムーズに構築できると思います。

 

 

事業計画は「絵に描いた餅」では厳しい

 

星野:金融機関から見た、良い事業計画、悪い事業計画とはどういうものですか?

 

上原:事業計画を提出される事業主の方の中に「銀行に出す事業計画はピカピカでちゃんと資金が回る計画じゃないとダメなんじゃないか」という方が稀にいらっしゃいます。実は、我々の見方は逆なんですね。医療・福祉業界は人を先行し、設備もフルラインナップでスタートする業界です。1年目もしくは3年目くらいまでは赤字になる計画が普通ではないでしょうか。もちろん赤字を容認しているのではなく、事業を軌道に乗せて、その赤字を何年で取り返せるのかというところを見ているんです。当初は黒字を計画していて、赤字になったときに足りない資金をどうするのかを、一緒に考えさせていただいています。そういう意味では、悪い事業計画というのは、「絵に描いた餅」のような計画なのかもしれませんね。

 

 

金融機関との取引は「バランスの良さ」がカギ

 

星野:いろいろな金融機関がありますが、どんな金融機関と取引するのがいいのでしょうか?

 

上原:法人に見合った銀行との取引が1番だと思います。ただし、どこか1行に偏ってしまうと、バブル崩壊時のように、金融状況が悪くなったときに困ります。あまりにも多くの銀行と取引するのもどうかと思いますが、メイン、サブ、その次くらいまで、それぞれゾーンを分けて、バランス良くお付き合いするのが良いと思います。

 

星野:メガ、地銀、信金信組、民間、公的というように、各々機能も分化しています。1行だけの付き合いで済む場合もありますが、そうでない場合もあります。そのなかで、私は、公的な金融機関である福祉医療機構は民間とセットで使ってもらうのがベストだと思っています。メインバンクがいて、サブとして設備投資等のときに我々をご利用いただければありがたく思います。

 

※ 本対談における上原氏の見解等は個人的所見であり、株式会社東京都民銀行の見解ではありません。

※ 本対談における機構職員の見解等は個人的所見であり、独立行政法人福祉医療機構の見解ではありません。

 

 

登壇者紹介

東京TYフィナンシャルグループ

株式会社 東京都民銀行 医療・福祉事業部長

上原 敦 

人物写真。東京都民銀行 医療・福祉事業部長、上原敦

宇都宮大学卒

1990年 足利銀行に入行、東京支店、本店営業部などに勤務

2004年 東京都民銀行に入行、医療・福祉事業部部長補佐、2008年 本店営業部次長

2012年 久米川支店長、2014年 医療・福祉事業部副部長、2017年 医療・福祉事業部長

独立行政法人福祉医療機構

経営サポートセンター コンサルティンググループ グループリーダー

星野 暢宏

人物写真。福祉医療、経営サポートセンター コンサルグループリーダー、星野 暢宏

早稲田大学政治経済学部卒業。現りそな銀行を経て、福祉医療機構に参画。

福祉医療貸付部では全国の新規融資案件を担当。顧客業務部では再生・法的措置案件を含む既存条件変更案件を担当するなど、両部通算で およそ10年間に亘り福祉医療貸付分野に特化した融資実務を担当。

経営サポートセンターでは病院等のコンサルや医療施設の経営分析レポート等を担当。

また、機構の内部格付及び自己査定システムの構築を行っている。